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横断歩道を赤色信号にかかわらず歩行中の被害者に衝突した交通事故で被害者が死亡し,被害者の相続人(妻・子)らが,損害賠償を求めた事案

横断歩道を,赤色信号にかかわらず横断歩行中の被害者に衝突した交通事故で被害者が死亡し,被害者の相続人(妻・子)らが,損害賠償を求めた事案。裁判所は,制限速度超過の被告と信号無視の亡被害者の過失割合を各5割として,亡被害者の損害額の相当額を認めた事例

 

損害賠償請求事件

東京地方裁判所判決/昭和60年(ワ)第6407号

判決日付:昭和61年2月28日

 

主   文

被告は、原告らに対し、それぞれ六〇五万三三五〇円及びこれらに対する昭和六〇年一月一七日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 訴訟費用は、これを五分し、その二を原告らの、その余を被告の各負担とする。
 この判決は、第一項につき、仮に執行することができる。

事   実

第一 申立
 一 請求の趣旨
  1 被告は、原告らに対し、それぞれ一〇〇〇万円及びこれらに対する昭和六〇年一月一七日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
  2 訴訟費用は被告の負担とする。
  3 仮執行宣言
 二 請求の趣旨に対する答弁
  1 原告らの請求をいずれも棄却する。
  2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 主張
 一 請求原因
  1 事故の発生
   (一) 日時 昭和六〇年一月一七日午前〇時一〇分ころ
   (二) 場所 東京都中央区築地三丁目一六番一二号先路上(以下「本件事故現場」という。)
   (三) 加害車 普通乗用自動車(練馬○○か○○○)
   (四) 右運転者 A(以下「A」という。)
   (五) 被害者 B(以下「亡B」という。)
   (六) 事故の態様 加害車は、本件事故現場で歩行中の亡Bに衝突し死亡させた(以下「本件事故」という。)。
  2 責任原因
    被告は、加害車を自己のために運行の用に供していた者であるから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条により、原告の後記損害を賠償する責任がある。
  3 損害
   (一) 逸失利益 四八〇六万七七四三円
     亡Bは、昭和八年○月○○日生まれであり、本件事故当時築地市場内の有限会社Cの社員であり昭和五九年度の年収は七一二万五〇〇〇円であったから、死亡時からの就労可能年数を一五年、生活費控除率を三五パーセントとし、年五分の割合による中間利息控除をライプニッツ式計算法で行い、同人の逸失利益を次のとおりの計算式により四八〇六万七七四三円と算出した。
    (計算式)
    七一二万五〇〇〇円×(一-〇・三五)×一〇・三七九=四八〇六万七七四三円
   (二) 慰藉料 一八〇〇万円
     亡Bは、本件事故の結果死亡したもので、同人が一家の支柱であったことその他諸般の事情を総合すると、同人の精神的苦痛を慰藉するための慰藉料としては一八〇〇万円が相当である。
   (三) 相続
     亡Bは、右損害賠償請求権を有するところ、原告X1は同人の妻、原告X2は同人の子であり、相続人であるから、同人から右損害賠償請求権をそれぞれ二分の一ずつ相続した。
   (四) 葬儀費 合計一二二万四一〇〇円
     原告らは、右金額をそれぞれ二分の一ずつ負担した。
   (五) 弁護士費用
     原告らは、被告が任意に右損害の支払いをしないために、その賠償請求をするため、原告ら代理人らに対し、本件訴訟の提起及びその遂行を依頼し、それぞれ本訴において認容された額の一〇パーセントを支払うことを約した。
   よって、原告らは、被告に対し、自賠法三条の運行供用者責任により、それぞれ右損害金の内金一〇〇〇万円(合計二〇〇〇万円)及びこれらに対する本件事故の日である昭和六〇年一月一七日から支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
 二 請求原因に対する認否
  1 請求原因1(事故の発生)の事実及び同2(責任原因)の事実はいずれも認める。
  2 同3(損害)の事実中、慰藉料の額は争い、その余は知らない。
 三 抗弁
  1 過失相殺
    本件事故現場は、信号機により交通整理の行われている交差点であり、Aは、加害車を運転して本件交差点を通過するに当たり、手前で対面信号を確認したところ、青色を表示していたのでそのまま本件交差点に進入し、直進しようとしたところ、進入直後、本件交差点出口の横断歩道上を歩行者用信号が赤色を表示していたのを無視して、加害車の左方から右方へ横断中の亡Bを発見し、急制動の措置を講じるとともに警音器を吹鳴して同人に危険を知らせたが、同人がなおも横断歩道上を左方から右方へ横断し続けたため、加害車を同人に衝突させたものである。
    右のとおり、Aは、対面信号が青色を表示していたため、それにしたがい本件交差点に進入したものであるのに、亡Bは、歩行者用信号が赤色を表示していたのを無視して、加害車の進路直前を横断しようとしたもので、同人には重大な過失があり、同人が交通法規を遵守していれば、本件事故の発生はあり得なかったものである。しかも、亡Bは、本件事故当時、血液一ミリリットル中約一・四ミリグラムのアルコールを身体に保有する状態であり、これを呼気一リットル中の血中アルコール濃度に換算すると、約〇・七ミリグラムということになり、本件事故当時、同人はかなり酩酊した状態にあったものであり、そのため、同人は機敏な対応がとれなかったものである。
    これに対し、Aには、信号を無視して酩酊のうえ加害車の進路直前を横断する亡Bのような無謀な歩行者の存在までも予見して進行すべき注意義務はない。
    以上のように、本件事故発生についての責任の大半は、亡Bにあるのであるから、損害賠償額の算定に当たっては、亡Bの過失を充分に斟酌すべきである。
  2 弁済
   (一) 原告らは、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)から、一八七七万五九〇〇円の支払いを受けた。
   (二) 原告らは、被告から、一七一万七七〇〇円の支払いを受けた(右金額につき、被告は、自賠責保険から支払いを受けている。)。
   (三) 原告らは、右の他、被告から、三三万一五〇〇円の支払いを受けた。
   (四) 原告X1は、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)から、遺族特別支給金三〇〇万円、遺族特別年金一八万六五〇〇円の支給を受け、更に、同額の遺族特別年金を継続して支給する旨の決定を得ている。
 四 抗弁に対する認否
  1 抗弁1(過失相殺)の事実は争う。
  2 同2(弁済)の事実は認める。
第三 証拠
   本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理   由

一 請求原因1(事故の発生)事実及び同2(責任原因)の事実はいずれも当事者間に争いがない。そうすると、被告は、原告らの後記損害を賠償すべき責任がある。
二 過失相殺の抗弁について判断する。
 1 当事者間に争いがない乙一号証から六号証まで、七号証の一、二、第八及び九号証によれば、以下の事実が認められる。
   本件事故現場は、日比谷方面(西方)から月島方面(東方)に通じる晴海通りと、八丁堀方面(北方)から汐留方面(南方)に通じる新大橋通りの交差している築地四丁目交差点(以下「本件交差点」という。)の東側の晴海通り上に設置されている横断歩道上である。晴海通りの本件交差点の日比谷側は、歩車道の区別のある車道幅員二一・九五メートルで、車道中央には、幅〇・七メートル高さ一メートルのガードレールの設置されている中央分離帯があり、日比谷方面(西方)から月島方面(東方)への車線は、幅員一二・〇メートルで四車線(中央寄りから歩道寄りに、順次、幅員三・一メートル、二・八メートル、二・八五メートル、三・二五メートル)に区分されており、本件交差点の月島側は、車道幅員一七・九五メートルで、車道中央には、やはり、幅〇・七五メートル高さ一メートルのガードレールの設置されている中央分離帯があり、日比谷方面(西方)から月島方面(東方)への車線は、幅員七・二メートルで車線区分はされていない。新大橋通りは、歩車道の区別があり、本件交差点内の車道幅員は二一・八五メートルである。本件交差点は、集中制禦式自動信号機が設置されており、車両用及び歩行者用信号機がいずれも設置されており、これにより交通整理が行われている。路面は、本件事故当時は乾燥しており、直線、平坦でアスファルト舗装がされており、見通しは良く、本件交差点の四隅には、水銀灯が設置されており、その前後の歩道上に約二五メートルおきに水銀灯が設置されているため、横断歩道上の通行人を約一〇〇メートルの手前から識別することができる。制限速度は、時速四〇キロメートルに規制されている。本件事故当時、本件事故現場である前記横断歩道から六・〇五メートル月島側の、日比谷方面(西方)から月島方面(東方)への車線の歩道寄りには、保冷車(自家用大型貨物自動車)が駐車していた(別紙図面参照)。
   Aは、加害車を運転し、晴海通りを日比谷方面(西方)から月島方面(東方)へ中央から二番目の車線を時速八〇キロメートルで進行し本件交差点に差しかかり、前方に前記車両が駐車しており、二、三人の人がその手前にいるのを認め、対面信号を確認したところ、青色を表示していたため、減速せずにそのまま進行し続け、本件交差点に進入したが、別紙図面②点(以下、単に符号で示す。)において、三四・五メートル先の本件交差点出口の横断歩道上の(ア)点を、歩行者用信号が赤色を表示していたにも拘らず、加害車の左方から右方へ横断中の亡Bを発見し、直ちに制動の措置を講じるとともに、③点において警音器を吹鳴して同人に危険を知らせたが、同人が気付かず、なおも横断歩道上を左方から右方へ横断し続け、加害車の進路前方の道路の幅員が狭くなり、かつ歩道寄りに駐車車両があったため避けきれず、X点において、加害車左前部を同人に衝突させ、頭蓋内損傷により、昭和六〇年一月一八日死亡させたものである。
   亡Bは、本件事故当時、血液一ミリリットル中約一・四ミリグラムのアルコールを身体に保有する状態であり、本件事故当時、同人はかなり酩酊した状態にあった。
   以上の事実が認められ、右認定を動揺させるに足りる証拠はない。
 2 右事実に徴すると、Aには、対面信号が青色を表示していたとはいっても、進行方向の交差点先は、幅員が狭くなり、車線が大幅に減少し、かつ、道路上に駐車車両があるために、何らかの事態が生じたときに危険を回避することが困難な道路状況であったにも拘らず、加害車を運転して、制限速度の時速四〇キロメートルを実に四〇キロメートルも上回る時速八〇キロメートルもの高速度で本件交差点に進入し、進路前方の横断歩道を横断中の亡Bを発見したのが三五・四メートルもの手前であるから、本来ならば、急転把等の措置を講じれば回避できる距離であるのに、前記の加害車の速度、道路状況であるのでそれもかなわなかったものであり、Aが、道路状況を把握し、制限速度あるいはそれに準ずる速度で進行していたならば、本件事故は回避できた可能性が極めて高く、Aの過失は重大である。
   他方、亡Bには、かなりの量の飲酒をしたうえ、歩行者用信号が赤色を表示しているにも拘らず、それにしたがわず、横断を開始した重大な過失がある。双方の過失を勘案すると、亡Bの過失相殺率は、五割と認めるのが相当である。
三 原告らの損害について判断する。
 1 亡Bの逸失利益 四四三七万円
   成立に争いのない甲一号証、原告X1本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲二号証及び原告X1本人尋問の結果によれば、亡Bは、昭和八年○月○○日生まれで死亡当時満五一歳であり、東京都中央区(以下略)所在の有限会社Cに勤務し、昭和五九年度の年収は七一二万五〇〇〇円であった。同社には定年制度はないため、亡Bは、原告ら主張のように、死亡時から一五年間は、就労可能であり、右と同額の収入が得られたはずであり、亡Bの扶養家族は、その死亡当時妻である原告X1一人であったから、生活費として四〇パーセントを控除し、年五分の割合による中間利息控除をライプニッツ式計算法で行うと、死亡当時の逸失利益の現価は、次の計算式のとおり、右金額となる。
  (計算式)
  七一二万五〇〇〇円×(一-〇・四)×一〇・三七九=四四三七万円(一万円未満切捨て)
 2 亡Bの慰藉料 一八〇〇万円
   亡Bは、本件事故の結果死亡したもので、前掲各証拠によれば、亡Bは一家の支柱であり、その他諸般の事情を考慮すると、同人の精神的苦痛を慰藉するための慰藉料としては一八〇〇万円が相当である。
 3 相続
   亡Bは、右損害賠償請求権を有するところ、前掲甲一号証及び原告X1本人尋問の結果によれば、原告X1は同人の妻、原告X2は同人の子であり、相続人であることが認められるから、亡Bから右損害賠償請求権をそれぞれ二分の一ずつ(一人当たり三一一八万五〇〇〇円)相続したものである。
 4 葬儀費用 それぞれ四〇万円
   原告X1本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、亡Bの葬儀費用のうち、原告らにつきそれぞれ四〇万円(合計八〇万円)が本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。
   小計 それぞれ三一五八万五〇〇〇円
 5 過失相殺
   原告らの右金額に、後記のように原告らの本訴において請求していない亡Bの傷害による損害(それぞれ二四万六八〇〇円)を加算した額から、五割を減額するとそれぞれ一五九一万五九〇〇円となる。
 6 損害のてん補
  (一) 抗弁2(弁済)の事実は当事者間に争いがない。
  (二) 右の事実中、(一)及び(二)につき、自賠責保険の原告らに対する支払い総額は二〇四九万三六〇〇円であり、成立に争いのない乙一〇号証によれば、右支払の内訳は、死亡による損害(葬儀費を含む。)二〇〇〇万円、傷害による損害(治療費四八万三七〇〇円、看護料六四〇〇円、雑費一二〇〇円、文書料二三〇〇円)四九万三六〇〇円であり、亡Bには、右の額の傷害による損害が生じたものと認められる。右のうち、原告らは、本訴において亡Bの傷害による損害を請求していないが、被告がこの部分についても弁済の主張をしているため、前記のように、原告らが各二分の一ずつ相続した亡Bの傷害による損害を、原告らの過失相殺前の総損害として加算することとする。
  (三) 右の事実中、(四)すなわち、原告X1が労災保険から、遺族特別支給金、遺族特別年金の支給を受け、更に、遺族特別年金を継続して支給する旨の決定を得ていることについては、右金員は、いずれも労働者災害補償保険法一二条の八に規定されている保険給付ではなく、同法二三条の規定に基づき労災保険の適用事業にかかる労働者の遺族の福祉の増進を図るための労働福祉事業の一環として給付されるものであって、労働者が被った損害のてん補を目的とするものではないから、損害を算定するにつきこれを損益相殺の法理によりその損害額から控除することはできないものと解するのが相当である。
    そうすると、損害額から控除すべき金額は二〇八二万五一〇〇円となり、弁論の全趣旨によれば、原告らは、これをそれぞれ二分の一ずつ(一〇四一万二五五〇円)自己の債権に充当したものと認められる。
   小計 それぞれ五五〇万三三五〇円
 7 弁護士費用 それぞれ五五万円
   弁論の全趣旨によれば、原告らは、被告が任意に右損害の支払いをしないので、その賠償請求をするため、原告ら代理人に対し、本件訴訟の提起及びその遂行を依頼したことが認められ、本件事案の内容、訴訟の経過及び請求認容額に照らせば、弁護士費用として被告に損害賠償を求めうる額は、それぞれ五五万円(合計一一〇万円)とするのが相当である。
  合計 それぞれ六〇五万三三五〇円
四 以上のとおり、原告らの本訴請求は、それぞれ六〇五万三三五〇円(合計一二一〇万六七〇〇円)及びこれらに対する本件事故の日である昭和六〇年一月一七日から支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからいずれも認容し、その余の請求は理由がないのでいずれも棄却することとし、訴訟費用については民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言については同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
    東京地方裁判所民事第二七部
           裁判官  宮川博史



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