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加害者が運転する乗用車に追突されて傷害を負ったとして,加害者らに対し損害賠償を求めた事案,頸椎捻挫に引き続くバレ・リュー症候群という自律神経の障害を受けたものと判断,請求を一部認容した事例

乗用車を運転中の原告(被害者)が,被告会社が保有し,被告(加害者)が運転する乗用車に追突されて傷害を負ったとして,被告ら(加害者ら)に対し損害賠償を求めた事案で,裁判所は,原告の頸椎の神経根及び脊髄には障害は認められず,頸椎捻挫の状態,いわゆる鞭打ち症といえるものであるとし,原告に発生した上肢のシビレ感などは,X線(レントゲン)写真等による他覚的所見は認められないものの,頸椎捻挫に引き続くバレ・リュー症候群という自律神経の障害を受けたものと判断して,請求を一部認容した事例。

東京地方裁判所判決/平成5年(ワ)第18059号
判決日付:平成7年9月19日

主   文

一 被告らは原告に対し、連帯して一八〇万七二七〇円及びこれに対する平成四年六月九日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを五分し、その四を原告の負担とし、その余は被告らの負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一 請求
被告らは原告に対し、連帯して、九〇五万七二一五円及び内金七七四万九一一五円に対する平成四年六月九日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
普通乗用自動車を運転中の原告が、被告会社が保有し、被告Y1が運転する普通乗用自動車に追突されて傷害を負ったとして、被告らに対し損害賠償を求めた事案である。
一 争いのない事実
1 原告(昭和二年○月○○日生まれ)は、□□大学声楽科教授である。
株式会社Y2(被告会社)は、宣伝、広告の代理業務その他を営む会社であり、被告Y1(被告Y1)は被告会社の代表取締役である。
2 本件事故
日時 平成四年六月九日午前九時五〇分ころ
場所 東京都世田谷区太子堂二丁目一四番
加害車 被告会社が保有し運行の用に供しており、被告Y1が運転する普通乗用自動車(品川○○そ○○○○)
被害車 原告が所有し、運転する普通乗用自動車(品川○○む○○○)
態様 加害車が被害車に追突した。
3 本件事故後、原告は国家公務員等共済組合連合会三宿病院(三宿病院)に通院し、治療を受けた。
4 本件事故により被害車はその修理に四八万三八八七円を要した。
二 争点
1 被告Y1の過失及び被告会社の責任
2 原告の傷害及び後遺症
3 損害額(当事者双方の主張は別紙損害金計算書のとおり。)
第三 争点に対する判断(書証の成立につき争いのあるものは原告本人または弁論の全趣旨によりその成立を認める。)
一 争点1
前記争いのない事実に、証拠(甲二五、乙一の1ないし4、原告本人、弁論の全趣旨)を総合すると、本件事故は、国道二四六号線の三軒茶屋の首都高速に入る前の陸橋の下り坂の真ん中で、被害車が渋滞中の車両の最後尾に停車していたところ、加害車が追突したこと、加害車を運転していた被告Y1は、原告に高速にのるための料金の計算をしていて前を見ていなかったと言っていたこと、被告Y1は実況見分の際には、加害車の床に落としたライターを探していた旨指示説明していたことが認められ、その原因については証拠上確定することはできないものの、被告Y1に前方不注視の過失があったことは明らかである。そして、被告会社が加害車の運行供用者であることは当事者間に争いがない。
よって、被告Y1は民法七〇九条により、被告会社は自賠法三条により、本件事故により生じた原告の損害を賠償する義務がある。
二 争点2
1 証拠(甲七ないし一七、二六の1ないし6、二七の1ないし4、二八ないし三三、三九の1ないし4、乙三、証人A、原告本人)によると次の事実が認められる。
(一) 原告は本件事故当日、項部痛を訴えて三宿病院を受診した。原告を診察した同病院のB医師は、四方向のX線写真を撮るなどして診察をした。B医師は、原告に脊柱傍筋(頸椎の回りの筋肉)に軽度の痛みを認めたが、頸椎の可動域は正常であり、頸椎症性神経根症に対するテスト(ジャクソンテスト、スパーリングテスト)ではその徴候は認められず、下肢の感覚、運動は正常であり、二頭筋の腱反射は正常であった。また、同医師はX線写真上、第五、第六、第七頸椎に変形性変化(骨棘)を認めた。
(二) B医師は、原告に第五、第六頸椎の変形があるが、それは老化によるもので、本件事故によるものではないことを告げ、頸椎捻挫と診断して、外用薬(湿布薬)を処方した。
(三) 原告はその後、三宿病院には平成四年には六月一二日、七月一日、八月二六日、九月一六日、一〇月七日、一〇月二八日、一一月一八日、一二月九日に通院し、平成五年には一月一三日、二月二四日、三月三一日、四月二八日、五月二七日、六月二四日、七月二二日、九月二日に通院し、平成五年四月二八日を除いてはA医師の診察を受けた。
その間、原告は、本件事故以前にはなかった頭痛、肩凝り、耳鳴り、めまい、左上肢のシビレ感があり、平成五年五月ころには症状が増悪したことがあったので、原告の希望で平成五年七月二九日に三宿病院の脳外科でCT検査を受けたが、正常と診断された。右脳外科には同年八月一二日にも受診し頭痛薬などの投薬を受けた。
(四) A医師は平成五年九月二日に、原告の自覚症状として頸部痛、左上肢シビレ感が存在し、レントゲン上異常はなく、頸椎過伸展にて左手掌にシビレが認められるとし、同日をもって原告の症状は固定したと診断した。
(五) A医師は、原告には上肢のシビレ感があることから(ママ)などから、頸椎捻挫のあとに引き起こされる自律神経障害であるバレ・リュー症候群と診断している。右症候群の発生機序は色々な説があり、治療法としては医学上確立したものはなく、A医師は頸椎捻挫に対する一般的な治療以外に決め手はなく、その症状の回復には時間の経過しかないと考えている。
また、A医師は原告に認められる頸椎の変形(第五ないし第七頸椎)では、その神経の支配領域に対応する親指や中指など特定の場所の感覚障害を引き起こすが、原告の症状は全般的な左上肢のシビレ感であり、右頸椎の変形は原告の症状の原因ではないと判断している。
2 右事実によると、原告の頸椎の神経根及び脊髄には障害は認められず、頸椎捻挫の状態にあり、それも頸椎の可動域が保たれていることから比較的軽度ないわゆる鞭打ち症といえるものであったと考えられ、X線写真上認められる第五ないし第七頸椎の変形は、加齢によるものである上に、本件事故以前にもその変形による症状はなく、本件事故以後の原告の症状にも影響を与えていないと認められる。
そして、原告には本件事故以前にはみられなかった上肢のシビレ感などが本件事故後発生しており、X線写真等による他覚的所見は認められないものの、頸椎捻挫に引き続くバレ・リュー症候群という自律神経の障害を受けたものというべきである。
三 争点3
1 治療費
(一) 三宿病院
原告が三宿病院に平成四年六月九日から同五年九月二日まで通院していたことは前記認定のとおりであり、被告らに右病院の治療費、文書料の合計三万八二七〇円の支払義務があることは当事者間に争いがない。
(二) △△整骨院
証拠(甲一九、二〇の1ないし52、二六の2、3、原告本人)によると、本件事故後、原告には頭がフラフラする症状や、頭痛、肩凝り、耳鳴りなどの症状があったこと、三宿病院に通院する一方、東京都渋谷区(以下略)の△△整骨院(プリメーラ治療室)で平成四年六月九日からカイロプラックティックの施術を受け始め、同月中に九回(九日、一一日、一五日、一六日、一九日、二二日、二三日、二五日、二九日)、同年七月には六回(三日、八日、一四日、一八日、二三日、三一日)、同年八月には四回(四日、八日、一七日、二七日)、同年九月には三回(五日、一〇日、一八日)同年一〇月には三回(九日、一六日、二七日)、同年一一月には三回(五日、一三日、二三日)の施術を受けたこと、その後も平成六年五月二五日まで一か月に一ないし四回程度通院したこと、平成四年六月九日から平成五年八月五日までに合計四八回通院し、その治療費(平成四年六月九日は七〇〇〇円、その後は一回四〇〇〇円)の合計は一九万五〇〇〇円となったことが認められる。
そこで、右治療の必要性について判断するに、証人Aの証言によると医学的にはカイロプラックティックは原告のようなバレ・リュー症候群の患者には有効ではなく、むしろ悪影響があると考えられていること、原告本人尋問の結果によると右施術を受けるようになったのは医師の指示ではなかったことが認められるものの、原告本人尋問の結果によると右施術を受けた後は症状は良くなることが認められ、少なからず原告の症状を軽快させるのに効果があったことを否定できない。そして、前記認定のとおり平成四年六月に九回、同年七月に六回、同年八月に四回と比較的頻繁に通院し、その間隔も短いが、その後は、一か月三回程度でその通院間隔も長くなっていることを勘案すると、比較的頻繁に通院していた平成四年六月九日から同年八月二七日までの合計一九回については治療の必要性を認めるのが相当であり、その治療費の合計は七万九〇〇〇円となる(なお、被告らも平成四年七月三日までの分の治療費は支払義務を認めている。)。
(三) 整体治療
原告本人尋問の結果によると、本件事故後三回は整体治療師のCの治療を受けたことが認められるが、他方、右結果によると、右治療は原告が子宮筋腫になったときに受け始め、それ以来健康維持や疲労回復のために、一、二か月に一回程度治療を受けていること、本件事故の翌日に受けた治療は本件事故以前に予約していたものであることが認められ、右事実に加え、本件において右治療が三宿病院、△△整骨院への通院治療と並行して必要であったことを認めるに足りる証拠はなく、右整体治療を本件事故による原告の傷害の治療のために必要であったと認めることはできない。
(四) ××治療院
証拠(甲二一の1ないし4、三五の1ないし4、原告本人、弁論の全趣旨)によると、原告は××治療院で鍼、マッサージ等の治療を受けたこと、原告は××治療院の治療を受けるため本件事故以前である平成五年二月一二日及び同年六月七日にそれぞれ五回券を購入していることが認められ、これも健康維持や疲労回復のために治療を受けていたのではないかと推認され、その上に本件において右治療が三宿病院、△△整骨院への通院治療と並行して必要であったことを認めるに足りる証拠はなく、××治療院での治療が本件事故による原告の傷害の治療のために必要であったと認めることはできない。
2 評価損
財団法人日本自動車査定協会東京都支所の証明書(甲五)には、被害車は本件事故により平成四年一二月一〇日現在で一七万四〇〇〇円の減価があったこと、事故減価とは事故車と無事故車との商品価値の差を算定するとしていること、算定方法としては復元修理以前の事故現状における損傷個所ならびにその損傷度合を査定し、部品、工賃の復元費用を勘案して算定するもの(事故現状車)と事故復元後の痕跡が無事故車と比較してどの程度の商品価値に差が生ずるかを算定するもの(事故復元車)があることがそれぞれ記載されているが、右減価額が右算定方法をどのように適用して算定したものか不明であり直ちに右記載の減価額を採用することはできない。
そして、本件証拠上、修理後にもなお外観や機能に欠陥が生じていたことは確定することはできないが、事故歴のある車はそれだけで評価が下がることは右証明書(甲五)によっても明らかなこと、原告が被害車を購入したのは本件事故の約二か月前であったこと(甲三、原告本人)を考慮し、被害車の修理費四八万三八八七円(当事者間に争いがない。)の約一割である五万円をもって本件事故と因果関係のある評価損と認める。
3 査定料
証拠(甲六、原告本人)によると原告は評価損算定のため財団法人日本自動車査定協会東京都支所にその算定を依頼し、査定料として一万一八四五円を支払ったことが認められるが、これを本件事故と因果関係のある損害と認めることはできない。
4 休業損害
証拠(甲二二、原告本人)によると、本件事故により原告は講師を勤めていた学校法人Dを三日間欠勤し、一五万円の収入が得られなかったことが認められる(被告らは右金額の支払義務を認めている。)。
5 慰謝料
(一) 通院慰謝料
前記認定のとおり、原告は本件事故による頸椎捻挫の治療のために、三宿病院の整形外科に合計一七日間、同病院の脳外科に二日間、それぞれ通院したものであり、その慰謝料としては三三万円が相当である。
(二) 後遺症慰謝料
前記認定のとおり、本件事故の結果、原告にバレ・リュー症候群の障害が残存していることは医学的に説明可能であり、本件証拠上、故意に誇張された訴えであるなどの事情も窺われないから、自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表一四級一〇号に該当するものといえ、その精神的苦痛を慰謝するには一〇〇万円が相当である。
6 弁護士費用
証拠(甲二四、原告本人)によると原告が本件訴訟の提起、遂行を原告代理人に委任したことが認められるところ、本件事案の内容、審理経緯及び認容額等の諸事情に鑑み、原告の本件訴訟遂行に要した弁護士費用は、原告に一六万円を認めるのが相当である。
7 合計
1ないし6の合計は、一八〇万七二七〇円となる(別紙損害金計算書のとおり。)。
四 まとめ
以上によると、原告の請求は一八〇万七二七〇円及びこれに対する本件事故の日である平成四年六月九日から支払済まで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却する。
東京地方裁判所民事第二七部
裁判官  竹内純一



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